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三相分布について

土壌は、①固相、②液相、③気相、を構成成分とする三相系物質です。
固相は鉱物を主とする無機質と有機質、液相および気相はそれぞれ土壌水分および土壌空気により構成されています。
この固相・液相・気相のそれぞれ占める容積割合が土壌の三相分布です。
植物にとって
①固相は根系の発達により値物体を支持し、ミネラルの供給、養分の保持、供給
②液相は水分や養分の供給
③気相は植物根系への酸素の供給、雨水の貯留、排水および土壌生物の活動による有機質の無機化等それぞれ大切な役割をになっています。
土壌の肥沃性や作物の生育には、この土壌三相の適正な関係が決め手となり、三相分布の状態を知ることが土壌診断の基本となっています。
また土壌三相の適正範囲をつくり出すことが土壌改良の目的となります。
実容積とは
土壌は土粒子、水、空気から構成されるものとします。
図1に示すように、その構成要素の組み合わせによって、土粒子と水からなるものを飽和土、土粒子、水、空気からなるものを不飽和土、水を含まない土粒子と空気からなるものを乾燥土と言います。

図1 土壌の構成
土壌の構成要素の土粒子(固相)、土に含まれる水(液相)、空気(気相)の3相からなる土壌(不飽和土)に対する体積を表す用語には、全容積(Vt)、実容積(V)、固相容積(Vs)があります。
体積Vtである土壌を採集したとすると、図2に表すように、土粒子の体積をVs 、水の体積をVw 、空気の体積Va で表すと、採取した土壌の全容積Vtは、

と表せます。このうち、土粒子と水の体積の和を実容積と呼びます。したがって、実容積Vは、
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です。また、実容積は全容積から空気の体積を減じたものとも言えます。

図2 土壌構成要素3相の体積
ここで、水や空気が入り込める土粒子間の隙間を「空隙」と言います。
建設業界では地盤やコンクリート、建築材料などの中にある空気や水分が入り込むスペースを指します。
同義の言葉ですが、土質力学や地盤工学、水門地質学の分野では「孔隙*1」が使われます。
ただし、孔隙というと粒子自体の中にある微細な穴(多孔質)のことを指すことがあるので、ここでは、粒子と粒子の間にある空間を指す意味で「空隙」を使うことにします。
採取した土壌の体積Vtに対して空隙の割合を「空隙率」と言います。
上の定義では土粒子の占める体積以外が空隙の体積ですから、空隙体積Vvは
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です。したがって、空隙比pは

と表せ、空隙率ε[%] は次のように表せます。
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ここで、式(4)の右辺第二項の Vs/Vt は土壌体積に対する土粒子の占める体積割合なので(固相比)、これをパーセント表示したものを固相率χ [%](充填率とも言う)と言います。
したがって、
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です。当然ですが、固相比と空隙比の和は1となります。

蛇足ですが、固相率と空隙率の関係は
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となります。
ちなみに、土壌の体積含水率θ[%]は、

と表せます。
ここで土粒子の密度ds [g/cm3]について、考えてみましょう。水の密度をdw [g/cm3]、空気の密度をda [g/cm3]、とするとそれぞれの体積からそれぞれの重さに換算したとき、採集した土壌の重さをWtとすると、
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となります。ここでda≪(ds , dw) ですので、空気の重さを無視すると、式(10)は、
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と表せますから、土粒子の密度は、式(2)を代入して、
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これで見積もられる土粒子の密度dsを真密度と言います。
土粒子(固相)の平均密度を表しています。
なお、水の密度との比を比重と言います。
水の密度を1 g/cm3とすると、土粒子の密度との比はds /1=dsとなり単位を外したものとなります。
式(12)のds は真比重とも言えます。
式(12)の右辺の分母に実容積Vが入っていることから、土壌の真密度(真比重)を見積もる際に実容積の計測が必要となることがわかります。
このためには、式(12)より、全体の重さWt、含まれる水の重さWs、実容積V、水の体積Vwを知る必要があります。
重さであれば、秤を用いれば測ることは容易ですから、元の式(11)より、
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したがって、
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となりますから、全体の重さを測った後、土壌の水分を除くために加熱して水分を蒸発させ乾燥土を作り、その重さを求め、それを土粒子の体積で除することで求めることができます。
ここで土粒子の体積を知る必要がありますので、実容積から水の体積(水の重さ/密度=体積と同じ値)を差し引くことで求められます。
このために、実容積の計測が必要となるわけです。
しかしこの方法だと、例えば田圃や現地で即計測するというわけにはいかなくなります。
そこで以下に示すような、実容積Vの計測方法を考えてみましょう。
*1 美園 繁、実容積法と土壌の3相構造、明文社、昭和61年
実容積計測原理
実容積とは式(2)で示したように、土粒子と水である固相と液相のそれぞれの体積の和です。
土粒子の形状は様々ですし、土粒子同士を繋ぐ間隙水を含めると、固液2相の体積を測るのは形状が明確でないので計測は困難です。
したがって、先に示したように重さを測ることで見積もることのほうが簡単なように思えます。
しかし、式(14)を見るとわかるように、土粒子である固相の真密度がわかっている場合は良いのですが、わからない場合は土粒子の体積を求める必要があります。
固相と液相が混在する実容積を測るのに、なんと気体の状態を表すボイル・シャルルの法則を利用します。
この法則は、閉じ込めた気体の体積V [m3]は、圧力p [Pa:パスカル]に反比例し、絶対温度T [K:ケルビン]に比例するという法則です。
すなわち、状態1から状態2に変化するとき、次の関係が成り立ちます。

ここで、nは容器内の気体のモル数*1、R=8.314 [J/(K・mol)]は気体定数です。
もし温度が一定であれば、上式は次のようにも書けます。
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つまり圧力と体積が反比例の関係にあることを利用するわけです。

図2 圧力paからpcになるまでの押し込み体積の比較
a)空の容器、b)体積Vsの試料を入れた容器
体積V0の空の容器のふたを閉じると、気温T0ケルビン、大気圧paパスカル、n0モル*2の量の空気が入っていることになります。この時の気体の状態方程式は

と表されます。次にふたに錘をのせるとそれが容器内の体積をΔVだけ縮ませ、体積Vになり、内部の圧力はpcとなったとします。
容器は閉じられているので、内部に閉じ込められた空気の量は変わらないので、モル数はn0のままです。
また温度も変化しないとするとT0のままです。
したがって、気体の状態方程式は、

と表せます。式(17)と式(18)から、
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の関係が得られます。
同様に、容器内に体積Vsである試料の土壌をいれて、同様のことを行うことを考えましょう。
試料入れた初めの体積Vv0はVv0=V0-Vsであり、大気圧はp0、気温はT0、空気の量は試料を入れたためにその分少なくなっておりnvモル(nv<n0)である。
この時の気体の状態方程式は、

であり、ふたに錘をのせて内部の圧力がpcになったとき、容器内の体積はΔVVだけ縮んで、VVになったとします。
そうすると気体の状態方程式は、

になり、式(20)と式(21)より、
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となります。
式(19)、(22)で表される2つの状態方程式から、

の関係が得られます。つまり、元の体積に対して縮めた体積の比が同じであれば同じ圧力上昇が得られることを表しています。
式(23)にVv0=V0-Vsを代入すると、

の関係が得られ、空の時に内部の圧力をpcにする体積縮小量ΔVと、試料を入れて押し込んでpcまで上昇させる体積縮小量ΔVVの比から、入れた試料の体積Vsが計測できることを表しています。
これが計測原理となります。
*2 モル数(mol)=質量(g)/モル質量(g/mol) ここでモル質量は原子量や分子量にグラム(g)を付けた値となります。例えば水H2Oの分子量は1×2+16=18 なので、水のモル質量は18g/mol. 気体の場合、1モルの気体の体積は標準状態(0℃、1気圧)であれば22.4ℓの体積を占めるので、気体のモル数(mol)=気体の体積(ℓ)/ 22.4 (ℓ/mol)で表せます。酸素分子O2の場合、1モルに含まれる分子の数は6.02×1023個で、質量は酸素原子Oの原子量が16なので16×2=32 g、標準状態(0℃、1気圧)では22.4ℓ=22.4×10-3 m3の体積となります。
監修 東洋大学名誉教授 望月 修
土壌の実容積を測定できる機器
上記で紹介した原理で土壌の実容積を測定するには「DIK-1150 デジタル実容積測定装置」を使用します。
この機器は100ml試料円筒に採取した土壌ごと機器に入れ、ボタンを押すだけで実容積を測定できます。
詳細は下記動画をご覧ください。

